「避けて、ないよ?」
 おどおどした感じで再度言われる。
「避けてるっ。会話してても避けてる。一緒にいても避けてるっ」
 翠葉ちゃん、わかっているでしょう? 一緒にいるから避けてないことにはならないんだよ。一緒にいるのに一緒にいる感じがしないから苦しいんだよ。
「――顔合わせて話しているから避けていることにならないとか……一緒にお弁当食べているから避けてることにはならないとか……そいうことじゃない。……翠葉ちゃん、毎日毎日、藤宮先輩の気持ちをスルーしてるでしょっ!? そういうの……」
 勢いに任せて怒鳴ってしまいそうになる。
 ダメ。違う、そうじゃない……。ただ、わかってほしいだけ。わかってほしい……。
「そういうの……物理的に避けられるよりももっとつらいって、翠葉ちゃんは知ってると思ってた――。友達にそういうことされてもつらいけど、好きな人が相手だったらもっとつらいよっ? なんでっ!? 翠葉ちゃん、藤宮先輩のこと好きだよねっ? なのに、どうしてっ!? 好きな人が自分を好きになってくれるのなんて奇跡だよっ? そういう恋ができたら大切にしようって言ったじゃん……。翠葉ちゃんずるいよっ。両思いなのにずるいっ。私はどんなに好きでも両思いにはなれないのに……」