足元にいたスノウを撫でて見せたけど、
「……でも、やっぱり少し見てからにする」
「……そう?」
「うん」
 中に入ってくるとは言わなかった。
「この白い子がスノウ。灰色の子はグレイス。黒い子はクロ。ブチのはブッチー。茶色の子はチャロ。で、今私が描いてるこの子がピョン。……小学生のつける名前ってすごく安易だよね」
「そうだね。でも、かわいい名前だと思う。……あ、私のことは気にせずスケッチしてね?」
「……うん。そうする」
 そうは答えたけど……もはやスケッチどころじゃない。
 頭の中は翠葉ちゃんとウサギと藤宮先輩のことでいっぱいになっていた。
 どう見ても翠葉ちゃんはウサギを触りたそうに見える。だけど、翠葉ちゃんは網越しにも触ろうとはしない。