「じゃぁ、なんでそんな憂い顔?」
「なんで、かな……。たぶん、少しびっくりしているの」
「何に?」
「……二学期が終わるまでここにいられたことに」
 春からずっと使ってきた机にそっと手を伸ばし、それをじっと見つめる御園生の額を軽く叩いた。
 強く叩くつもりはなかったけど、思いのほか指先にきた衝撃は大きく、音もそれに伴う。
「残り一学期。三学期だって一緒に終業式迎えるつもりなんだから頼むよ……」
 目の前に御園生はいるのに、どうしてか現実味がない。存在も言葉も、すべて儚く消えてしまいそうで……。
「……ごめん。……そうだね、がんばらないと」
 話せば言葉が返ってくるのに、ひどく空虚だ。
「御園生……」
「ん?」
「二学期が終わるのに――どうして御園生は入学当初に戻ってんの?」
「え?」