帰ると言われるのも場所を変えると言われるのも、明日へ先延ばしにされるのも、すべてが嫌だった。
 そしたら、口をついたのは伝えたい気持ちを表す二文字の言葉だけだった。
 ツカサの表情が完全に固まってしまったことに気づいて私は慌てる。
「突然でごめんなさい。でも……ごめんなさい、すごく好きなの。好きっていう言葉以外にどんな言葉で伝えたらいいのかわからないの。すごく好きで……すごく好きで……」
 悲しい……。
 ツカサが留学してしまうことが。三月末までしか一緒にいられないことが。ひどく、寂しい――。
「……なんで翠はいつも唐突なんだ」
 息を吐き出すのと同時にそう言われた。