光のもとでⅠ

「いい香り……」
 ぬるめのお湯を手で掬っては流しを繰り返す。手から零れるお湯を見ても、底冷えするような恐怖を感じることはなかった。
 零れたらまた掬おう……。
 ふと思考が止まる瞬間がある。そんなとき、脳裏に浮かぶのはツカサのこと。
 会おうと思うとなかなか会えない……。会いたくないときはよく待ち伏せされていたのに……。
 今までなら、登校したその日に会いに来てくれていた気がする。二学期後半は毎日うちのクラスでお弁当を食べていたのだ。でも、退院してからは一度もない。それが示すところは、もう留学すると決めてしまったから――。
 病室で秋斗さんの話をされたときも、空港のラウンジで会ったときも、とても冷ややかな目をしていた。