三学期初登校――散々無理はしないように、と家族に言われて玄関を出た。
 マンションを出ると緩やかな下り坂が百メートルほど。そして、学園敷地内に入ると、下りてきた坂を折り返すように緩やかな坂を上ることになる。
 吐き出される息は真っ白で、それが徐々に目立つようになってきた。
「大丈夫か?」
 隣を歩く蒼兄が心配そうに顔を覗き込む。
「ちょっと、きつい、かな……」
 トレッドミルでリハビリをしていたとはいえ、坂道を上るのは当たり前のように負荷がかかる。
「やっぱり、明日からはしばらく車で――」
「ううん。車で送り迎えしてもらうくらいなら、少し早めに出て、もう少しゆっくり歩く。楽してばかりじゃ、いつまでたっても体力取り戻せないでしょう?」