確かに私はとても疲れているようだった。
 移動はとても楽をさせてもらったはずなのに、横になればすぐにでも眠れそう。
 緊張状態にあった心もだいぶ落ち着きを取り戻し、照明を消すと私はベッドに沈みこむような眠りについた。

 翌日、学校の授業を病室で終えると、紫先生立会いのもと、湊先生の診察を受けることになった。
 退院ができるかどうかの見極め診察なだけに、昨日の緊張とは異なる緊張を強いられる。けれども無事に退院の許可が下りた。
「まだ無理は禁物よ。移動教室のときは早め早めに行動しなさい」
「はい」
 湊先生が一歩引き、紫先生が前へ出る。
「きちんと閉じなくなった弁膜の手術は成功した。でもね、何度も話しているけれど、翠葉ちゃんの血液を送り出す力は弱いままであることは忘れないようにね。走れば血液循環量が追いつかず脳貧血を起こすし血圧低下を招くだろう。それだけはきちんと覚えていてほしい」
「はい」