「唯兄の意地悪……」
「だってかわいいからさ」
 言いながら、無防備だった左頬をぷにっと押される。
「今日は疲れてるだろうからって言ってた」
 助け舟のように話に加わった蒼兄に、
「蒼兄……唯兄がいじめる」
 蒼兄はクスクスと笑い、
「たまにはいいんじゃない?」
 そんなやり取りをしていると、ベッドの足元にいたお母さんから声をかけられた。
「具合はどうなの?」
「ん……ひどい動悸は感じなくなった。寝たのが良かったのかな? それとも、お薬が効いたのかな?」
 点滴を見上げて首を傾げる。
「どちらにせよ良かったわ」
 夕飯を食べ終わると、私を休ませるためにと家族は早々に退散した。