「私、秋斗さんのことは尊敬しています。好きな人ではないけれど、大切な人です。これからもずっと……」
 だから、どこにも行かないで――。
 その言葉だけは言えなかった。酷なことだとわかったから。
 佐野くんが教えてくれた。
 傷つかない人はいない――それはきっと私もなのだ。私が傷つかない方法もない。何かを失う痛みを伴う。だから、不可抗力で仕方のないことなのだ。
「ねぇ、翠葉ちゃん。君はひとつ決定的な思い違いをしてるんだけど、それ、訂正させてもらっていいかな?」
「何を、ですか……?」
「俺ね、君にキレイサッパリ振られても諦めるつもりはないんだ」
「……え?」