「翠葉、そろそろ着くわ」
 そろそろ、着く……?
「あ……」
 目を開けると、高級感が漂う内装が目に飛び込んできた。
 リムジン――私、車に乗ってすぐ寝ちゃったんだ……。
 状況を把握して唖然とする。
 湊先生は大好きだし、助けてもらっているのも重々承知している。でも――とても恨まずにはいられない。
 貴重な時間を強制的に睡眠時間にあてられてしまったのだ。
 秋斗さんに会ったらなんと話したらいいのだろう……。
 口にはしなかった。けれど、目が物語っていたのかもしれない。
「悪かった、なんて言うと思う? 言わないわよ? ここまで連れてきただけありがたく思いなさい」
 湊先生に先手を打たれた。