いつもならカウンター越しに先生を呼ぶけれど、私はあえてナースセンターの中へ入っていった。
「もう消灯の時間だろが。何やってんだ?」
「先生、明日……外出したいです」
「あ゛?」
「……秋斗さんに会いに、空港まで行きたいんです」
「あぁ……明日だったか」
「え……?」
「あの御曹司、医療機器の会社立ち上げてな、俺の伝手で海外の医療メーカー紹介してやったんだ」
 悔やんでも仕方ないけれど、どうしても悔やまれる。
 ツカサの言うとおり、私の周りの人たちはみんな知っていたのだ。