怖くて誰にも訊けなかったことも、さっきツカサに言われたことも何もかも。
『そっか……。藤宮先輩と秋斗先生もずいぶんな手に出たね』
「でも、私が悪い……。私、秋斗さんともツカサとも離れたくなくて、どちらかひとりを選んでどちらかひとりを失うのが怖くて――選ばないって決めたけれど、それでふたりが傷つくとは思ってもみなかったの」
 そう、気づきもしなかったのだ。どちらかを選んだらひとりが傷つく、そのことしか頭になかった。それなら、どちらも選ばなければいいと思っていた。
『今から話すのは俺の経験則。……好きって伝えて答えがもらえないのはつらいよ。自分がどう動いたらいいのかわからないっていうか、宙ぶらりんな感じがしてさ。そのまま想い続けるのもきっぱり諦めるのも、全部自分で決めることだけど、すぐ側に好きな人がいるとなるとね、やっぱキツイことはキツイ」
 佐野くんは一度言葉を区切った。