頭に浮かんだのは、終業式の日に悔しそうな顔をした佐野くんだった。
 佐野くんになら話せる。話をきちんと聞いてもらえる。
 すぐに電話帳から番号を呼び出しボタンを押した。躊躇など微塵もなかった。
 コール音が三回鳴ると、
『みそ、のう?』
 たどたどしい声で訊かれる。
「佐野くん、今、話す時間あるかな」
『大丈夫だけど……どうかした?』
「話、聞いてほしくて……。相談っていうか、話、聞いてほしくて」
『……いいよ』
「でも……ちゃんと、わかるように話せる自信はなくて、時間、かかっちゃうかもしれない」
 最後は泣いて縋るような状態だった。