流れる涙を拭くこともせず病室にひとり、ツカサの残したメモと向き合っていた。
 この番号は生きている。今からでも遅くはない? かけたら出てもらえる……?
 怖くて番号が押せない。でも、今かけなかったら明日には海外へ行ってしまう。今度こそ、本当に手の届かないところへ。
 意を決して数字を押していく。けれど、最後の通話ボタンを押すことができなかった。
「電話して、どうするの……?」
 なんて言うつもりなの?
 携帯の解約のことを訊くの? 海外に行くことを訊くの? 訊いてどうするの?
「だめ……訊くだけじゃだめ」
 それはわかるのに、どうしたらいいのかがわからない。
 誰かに話を聞いてもらいたかった。誰かと話したいと思った。
 今のこの状況を客観的に見てくれて、厳しいこともきちんと言ってくれる人――。