ツカサを強く意識するばかりで、「好き」という感情を捨てられてはいない。変化など、ない。
「……まだ変化はないようじゃの。気にする必要はなかろうて……。わしはただ、お嬢さんの気持ちに変化があったら知りたいのじゃ。何がどう変わったのかを」
 変化――。
 変化はあったかもしれない。でも、それを認めることはできなかった。
 もっとツカサを意識するようになってしまったとは、どうしても口にできなかった。
 口にしたら、「捨てる」ことができなくなりそうで。諦めることができなくなりそうで……。
 欲張りだ――ふたりを手放したくないうえに、この気持ちも手放したくないだなんて……。私、欲張りすぎる。
 コンコン――。
 ノック音にはっとし顔を上げる。けれどドアは開かない。
 今度は誰だろう……?
 思いながらドアを見つめていると、
「誰ぞ」
 私が答えない代わりに朗元さんが返事をしてくれた。