光のもとでⅠ

「想い」が詰まった歌詞や、「思い出」が詰まった曲を聞くのが怖かった。生きていることの次に向き合うものが、自分の「感情」かと思うと、躊躇して選ぶことはできなかったのだ。
 生きていることを実感する傍ら、自分の感情と向き合うのが怖いなんて……おかしいね。
 大好きなオルゴールの曲が流れる中、意識は浮き沈みを繰り返す。
 手術前からの寝不足が原因かもしれない。
 うつらうつらそんなことを考えていると、手首の針を抜くと起こされた。
 固定されていた左手が自由になる。動かしてみたら、針が刺さっていたところが少し痛んだ。けれど、右脇のドレーンが入っている部分に比べたら微々たる痛み。
 身体に痛みを感じるたびに憂鬱になるのではなく、生きていることを実感した。