朝食のとき、レストランフロアを見渡したけれど朗元さんの姿はなかった。
 誰に訊いたら教えてもらえるだろう。
 少し考えて静さんに声をかけた。
「おはようございます」
「おはよう」
「あの――」
 私が何を訊こうとしているのかすでに見当がついているような面持ち。
「会長かな?」
「はい……」
「翠葉ちゃんはご年配の方の生態を知っているかい?」
「え……? いいえ」
 静さんは珍しく苦笑を見せた。
「会長は毎朝五時には起床して六時前には朝食を済ませるんだ。今は部屋で招待客のリストか業績報告書に目を通しているんじゃないかな?」
「そうなんですね……。ありがとうございます」