「お母さんが知ってたってことはお父さんも知ってたよね。蒼兄は私と同じ、知らなかった人。海斗くんと栞さんもびっくりしてたから知らなかった人でしょう? でも、秋斗さんとツカサ、涼先生、湊先生、静さんあたりは知っていたと思う」
 指折り数えると、
「もう動揺してないの?」
「ううん、してる。してるけど……お昼よりは落ち着いていると思う。時間が経ったからかな? 少しだけ余裕ができたみたい」
「怒る?」
「どうして?」
「なんとなく……」
 暗い場所で小さな声で話す。まるで誰にも聞かれないよう内緒話をするみたいに。
 話の内容とは裏腹に、肌に触れる空気がこそばゆい気がして、その空気に笑みが漏れた。