朗元さんにもひとまず置いておくようにと言われた。それが正しいと思う。
 こんなもやもやした気持ちのままでは湊先生たちのお祝いはできない。
 現に、私はまだ一度も「おめでとう」を言えてはいないのだから。
 けれど、気になることがある。
 私が初めて陶芸品に触れたのはウィステリアデパートのあのショップ、「ウィステリアガーデン」でのこと。そして、そこへ連れて行ってくれたのはお母さん。
 当時、ガラス製品と木製品にしか興味のなかった私に、「陶芸品も見てみたら?」とコーヒーカップを手渡された。そのカップこそが朗元さんの作品だったのだ。
「お母さん……」
「何?」
「お母さんは――」
 言いかけてやめたのは今さらな気がしたから。
 考えてみたら、会長を知っているお母さんとお父さんが朗元さんを知らないほうがおかしい。わざわざ訊くことではない。