「……場所、変わってほしい」
 今すぐ逃げ出したいのを我慢してお願いしたのに、
「だーめ」
 たったの一言でサクリと却下された。
 意を決して前を向くと、すでに静さんは祭壇前にたどり着いており、参列客は皆前を向いていた。
 ただひとり、栞さんだけが静さんと昇さんを交互に見て、「どういうことっ!?」と慌てている。
 もしも自分が栞さんの立場だったら、と思うと心中穏やかではない。
 けれど、今の自分がなぜ平静を装えないのかを嫌と言うほど自覚しているだけに、神様に助けを請いたくなる。
「邪念退散……」
 思わず口にすると、唯兄が「ぷっ」と口元を押さえて笑った。