サロンに送ってもらったときはいつもと同じ髪型だった。
 結婚式のためにスタイリングしたのだろうか。
「あれはー……トップ中心にハードワックス揉みこんでボリューム出したんだろうな。逆毛とか立てたんかなー?」
 唯兄は観察しながらくつくつと笑う。
「本当、珍しい……。あんな司、初めて見た」
 蒼兄が珍しがっているのは声でわかった。
「いつもサラッサラヘアの人が違う髪型してると新鮮だよね? リーィ?」
 これ以上話しかけないでほしい。
「後ろもバランスよく丁寧に散らしてあるけど……普段からやってないと難しいと思うんだよねー。あれ、間違いなくコテかなんか使って毛先に癖付けしてると思うし。司っちってアレかね? 性格は不器用さんでも手先は超器用ってやつ?」
 からかい調子でツカサの話を続ける唯兄に耐えかねた。
「唯兄うるさいっ」