たまに思う。唯兄は純日本人だろうか、と。
 目にしたものを片っ端から褒め称えるそれが日本人ぽくない気がする。でも、唯兄はいたってナチュラルなのだ。
 褒められて嬉しいと思うより困ってしまった私は、お父さんと蒼兄の前を横切り、窓辺に置いてあるひとり掛けソファーに靴を脱いで上がりこんだ。
 こういうとき、シワのつきにくい生地はとてもいい子だなと思う。
 足を抱えて背もたれに身体を預けると、
「具合悪いのか?」
 蒼兄がソファーの前に膝をつき、私のことを見上げていた。
「ううん。でも、今日は一日が長いでしょう? だから、本格的始動までは省エネ設定」
 視線を合わせ笑みを添えて答えると、「そっか」とほっとした表情になる。
 柔らかくなった表情に、改めて蒼兄の笑顔が好きだな、と思った。
 たぶん、蒼兄の笑顔はハーブか何か、沈静効果のある植物からできているに違いない。
 ほどよく力の抜けた私は蹲ったまま目を閉じた。
 何も感じないように、何も考えないように――。