「多少は整えるけど、唯ほどには作りこまないよ。ハードムースで後ろに流す程度」
「まぁね。そんだけサラサラの髪質ならいじらんでもいいでしょうよ」
「何、唯のそれって自毛?」
 お父さんが訊くと、
「そっ。パーマとかかけてないし、カラーもやってないよ。もともとの髪がこんなんなの。もっとも、あんま信じてもらえないけどねっ」
 一束つまんで放すと、髪はごく自然にもとの場所へクルンと戻った。
「ふわふわしているのも好きだけど、スタイリング剤で癖をいかすのも格好いいね」
 背後から声をかけると、パァっと明るい顔がこちらを向く。
「リィっ、おかえり! わーわーわー! かわいくしてもらったね?」
 私の周りをくるくる回って褒めてくれる。
「サラサラストレートもいいけど、まとめ髪もいいっ! あっ、これ生花だね? お化粧もした? したよね? 血色よく見えるしさくらんぼみたいなグロスも似合ってる! ドレスの色も水色で良かったかもね」