「すみません……もう、ひとりで歩けます」
「あと少し……。テーブルまではこのままで」
 笑っているのにどこか寂しそうな表情に思えて、胸がチクリと痛む。
 テーブルまで来ると、秋斗さんは私の手を放し椅子を引いてくれた。
「ありがとうございます……」
「どういたしまして」
 家族も口々にお礼を言う。
「蒼樹の言ったとおりだったよ。翠葉ちゃんはバランス感覚が抜群にいい」
「あぁ、そうでしょう?」
 蒼兄はどこか自慢げに話し、さらに何か話しだしそうな気がしたからじとりと睨んだ。
 私の視線に気づいた蒼兄はそこで口を噤み、秋斗さんはクスクスと笑いながら、
「じゃぁ、またあとで」
 私には笑いかけ、家族には一礼して自分の着くべきテーブルへと歩いていった。