光のもとでⅠ

 実際に貧血を起こしているわけではない。ただ、「恐怖」が脳裏を掠めただけ。
 どちらの手も取らないということは、こういうことをいうのだと改めて思い知る。
 頭を振ったのは恐怖を払うため。
 最初の一歩でバランスを崩してしまったのは迷いからだろうか。
 身体が傾いたのは一瞬で、足を捻る前に右脇からしっかりと支えられた。
 ふわりと香ったのは秋斗さん愛用の香水。
「やっぱりガイドはあったほうが良さそうだけど?」
「す、みません……」
「いいえ。ただ、この手は解放してあげられないけどね。俺で良ければ歩くコツを教えるよ?」
 にこりと笑い、秋斗さんの手は腕から指先へと移動する。