光のもとでⅠ

「さ、早く行こう」
 再度ふたりから手を差し伸べられ、お腹にぐっと力を入れて断った。
「ひとりで歩けるのでっ……大丈夫、です」
 本当は全然大丈夫じゃない。真新しい、いつもよりヒールの高い靴に苦戦していた。
 ゲストルームを出るまで、こんなことなら家で少し履き慣らしておけば良かった、と泣き言を漏らしていたくらいには。
 でも、両脇で支えてもらうほどのことではないし、かと言ってどちらかを選ぶことはできないから……。
「ま、無理強いするものでもないしね。とりあえずレストランへ向かおうか」
 秋斗さんの言葉にふたりの手が下ろされた。
 差し伸べられた手が下ろされただけ。しかも、自分が断った結果。
 たかがそれだけのことなのに、す、と血の気が引くような気がした。