保健室を出て廊下を右に行くかと思ったら、飛鳥ちゃんに手を引っ張られた。
「え?」
「東口と南口は一、二年生で出入り口いっぱいになるから」
 飛鳥ちゃんがそう言うと、
「御園生を人ごみに入れると簾条と藤宮先輩がおっかない。西口は三年しか出入りしないから、そっちの方が空いてるんだ」
 佐野くんが補助的な説明をしてくれて意味がわかった。
「あ、メール。嵐(らん)ちゃんからだ。西口で嵐ちゃんが待ってるって」
 嵐ちゃん……? 荒川先輩のこと?
 ずいぶんと仲がいいんだな。中等部でも一緒だったんだろうか。
 ……あれ? 荒川先輩って外部生だった気が……。
 そんなことを考えつつ、五月には藤が咲いていた中庭の脇を通ると西口に着いた。
「飛鳥っ!」
 荒川先輩が元気に駆けてくる。
「同じ学校になったっていうのにめったに会わないよねぇ」
 と、飛鳥ちゃんが言うと、
「本当。二階と三階ってだけなのにね」
 と、荒川先輩が答える。