ちらりと肩越しに唯兄を見たけれど、ゴォゴォと音を立ててドライヤーをかける唯兄と話すのは至難の技だ。
 とりあえず、いったん携帯をテーブルに置いた。
 けど、意識も視線も携帯からは離れない。
 どうしよう……。
 違う――「どうしよう」ではなく、「ごめんなさい」のお返事をしなくてはいけない。
 わかってはいるのだけれど、どこから話せばいいだろうか、と考えてしまう。
 診察を受けていたから、涼先生に今日は早く休むように言われたから――。
 何を取っても言い訳のように聞こえる。
 気がつくとテーブルに突っ伏していた。
「リィ、貧血? 胃、痛い?」
 ドライヤーの音がピタリと止み、唯兄に訊かれる。
「ううん……少し、考えごと」
「あぁ、司っちと秋斗さんの件?」
「……うん」