「ひとりじゃないからいいとかそういう問題じゃない。今日は諦めろ」
 一方的に通話を切り携帯をしまうと、
「末の愚息からでした」
 きれいに口角を上げて言われた。
 会話の言葉運びからそんな気はしていたけれど、本当に――。
「ツ、カサ……?」
「えぇ。御園生さんを中庭に連れて来てほしいという用件でしたが、私の一存で却下させていただきました。全身状態が良くない患者を寒空のもとに連れ出すなど言語道断です。それに加え、もう九時半を回っている。お風呂に入って早く休んだほうがいいでしょう」
 にこりと笑った涼先生がドアを開けると、唯兄が私のコートを持って座りこんでいた。
 ティーラウンジで涼先生の話を聞いてから、その足でツリーを見に行くのに待っていたのだと思うけれど、それにしては罰の悪い顔をしている。