「それはそれは、貴重な電話をもらえて嬉しい限りだ」
 どこか皮肉めいた話しぶり。
 一呼吸置くか置かないかの間をあけ、「断る」と言い放つ。
「大体にして今が何時かわかって言っているのか? ――ふたりとも外に?」
 聞くつもりがなくても聞こえてしまうし、私と話すときとは違う口調に、つい神経がそちらを向いてしまう。
「それはご苦労なことだが――」
 床の一点を見て話していた涼先生が顔を上げ目が合った。
 聞いていたふうの自分が恥ずかしい。
 慌てて目を逸らしたけれど、すぐに戻すことになる。
「よそさまのお嬢さんをこんな時間に、しかも男ふたりのもとへなど送っていけるか」
 思わず戻してしまった視線はバッチリと合う。そして、涼先生は視線を合わせたままに言葉を続けた。