「さすがに山の上は冷えますね。寒くはないですか?」
「外は寒かったけれど、館内はあたたかいので大丈夫です」
「でも、手は冷たいですね」
 まるでエスコートするように手を取られてドキリとした。
 顔が似ているだけ。声が似ているだけ。私の隣にいるのは涼先生。
 ツカサじゃないツカサじゃないツカサじゃない――。
 忙しなく頭の中で唱える。すると、
「学校での司がどのような様子かとおうかがいしても?」
「司」という音にすら動揺してしまう。
 隣を歩いているのは涼先生だとしっかり認識するために、ゆっくりと見上げた。
 視線が交わり、涼先生がゆるりと表情を崩す。