「心が不安定なのよ。でも、治療を受けることを拒んでる。そんな若槻が始めて自分がからリハビリするって言い出して翠葉に近づいた。自分よりも年下の女の子に近づくなんて初めてなのよ……。それだけ、若槻にとって翠葉は特別なの。ただ一緒にいるだけでいい。それだけでいいから。……私たちにはできなことなの」
「……本当にそれだけでいいんですか?」
「いいわ。第一、ほかにできることなんてないでしょ?」
「それはそうなんですけど……」
「私たちでは若槻に寄り添うことはできない。でも、翠葉ならできると思う。根拠はないけど――でも、そうだと思いたい……」
 ただ一緒にいるだけ――。
 それだけのことをこんなにも重く感じたことはあっただろうか。
 ……ない。
 でも、秋斗さんが言っていた。這い上がってくる人だと。
 私もそれを信じていいだろうか。
 信じることで最悪の状況が避けられるのなら、強く強く信じる。
 自分に何ができるかなんてわからない。
 でも、もし唯兄の助けになれるのなら、その役は引き受けたい。
 ……唯兄、ひとりにはなろうとなんてしないで。私と蒼兄がいるから……。
 だから、お願い。ひとりにならないで――。