二時間のディナーを終えゲストルームに戻ってくると、各々着替えを済ませ、楽な格好でひとつのテーブルに集う。
「はぁ……」
 声を出してため息ついたのは唯兄。声は出さずにため息をついたのは私。
「唯も翠葉もお疲れさま」
 お母さんがコトリ、と音を立ててカップをテーブルに置く。
「なーんであんちゃんと俺の席反対じゃなかったかねっ!?」
「面識ある人を近づけた結果だろ?」
 さらりと答えた蒼兄に噛みつく勢いの唯兄。
「いやいやいやいやっ、面識あっても社長と一社員ですからっ。上司と部下っ、頂点と底辺っ」
 ガウガウ吼える唯兄をニコニコと見守るのは、お酒が少し入って機嫌がよくなっているお父さん。優しくいなしたのはお母さん。