「びっくりした?」
 嬉しそうに訊いてくるのはお母さん。
「同じ場所でありながら、どれだけ違う顔を見せられるか――それが今回の私の仕事」
 自信に満ちた物言いに誇らしい気持ちになる。
 ランチのときはカフェの雰囲気だったのに、今はレストラン。どこからどう見てもドレスコード必須のレストラン。
 でも、「レストラン」というよりも「晩餐会」という言葉のほうがしっくりくる。
 それはフロアの真ん中に大きな長方形のテーブルが陣取っているからほかならない。
 昼間、小島のように間隔を開けて置かれていたテーブルはどこにも見当たらなかった。
 テーブルには真っ白なクロスがかけられており、濃淡様々な藤色のセンタークロスが彩を添える。
 白い陶器のフラワーベースには深みある真紅のスプレーバラ。小ぶりではあるものの、蕾がほどよく開いた美しいバラのみが使われている。
 パッと見ただけでも豪華に見えるフラワーアレンジメントに、キラキラと光って見えるのは金箔、もしくは金粉ではないだろうか。