「回廊が動く歩道だなんて楽しいのに……なんでやめちゃったの?」
 唯兄が残念そうに訊くと、
「いやー……素材や見かけの問題? ほら、あれってあくまでもベルトコンベアだからさ、こんなふかふかの絨毯じゃないわけよ。もし色をつけたとしてもやっぱりゴムに変わりはなくってさぁ……。まぁ、想像してみてよ。動く歩道に立つ花婿と花嫁を」
 言われて皆が無言になった。
 近未来的、というキーワードに動く歩道はありでも、新郎新婦が歩くには少々華やかさに欠ける。いや、欠けるなんてものではないだろう。いっそ清々しいまでにそぐわない。
 薄手の絨毯を貼り付けたベルトコンベアなら作れたかもしれない。けれど、やはり厳かな雰囲気からは程遠い気がするし、歩道が動くということは、自分の意思で止まることはできないのだ。
 それではせっかくの風景をゆっくり眺めることもできない。