治療のあと、ルームウェアに着替えた私は少しの間寝ていたらしい。
 目が覚めたとき、室内には暗めの照明が灯っていた。
 大きな窓の外には幻想的な世界が広がっていた。
 街中で見るようなイルミネーションではない。
 チカチカと光るのではなく、時間差で光が灯り、波のように押し寄せては引いていく。
 陽が沈んだ直後、稜線に浮かび上がる光のライン。そこから細かな粒子が零れ落ちるように柔らかな光の波が押し寄せてくる。
 使われているのはオレンジっぽい光と白っぽい光。赤や緑、青といった色はない。
 黒い背景にまばゆい光が瞬いていた。
 ゆっくりと身体を起こすと、
「あ、起きた?」
 窓際で同じ光景を見ながらカップを傾けていたお母さんに声をかけられた。
「今、何時?」
「今、五時半を回ったところ。あと少しでディナーの時間」
 ということはそろそろ蒼兄たちもこの部屋に戻ってくるのだろう。