そして、また私の代わりにお母さんがお礼を言った。
 私は申し訳ないともありがとうとも言えず、ベッドに横になったまま。
 低い位置を彷徨う私の視界に、昇さんの褐色の肌が映りこむ。
「翠葉ちゃん、前にも言ったろ? 医者を頼れって。君は患者、俺は医者。患者は医者に頼ってなんの問題もない」
 軽く額を小突かれ、昇さんはニッと笑ってゲストルームを出ていった。栞さんも、「ゆっくり休んでね」と口にして昇さんのあとを追った。
「本当に……いい先生たちに出逢ったわね」
「うん。……山の神様のおかげかな?」
「きっとね。……最終日、帰る前に蒼樹や唯も連れてまた行こうか?」
 にこりと笑って訊くお母さんに、「うん」と答えた。