光のもとでⅠ

「この治療は神経の中枢に刺すようなものじゃないんです。もっと浅い場所、筋肉であったり皮下に注射して過敏になっている交感神経を抑えて血流を改善させたり、硬直している筋肉をほぐす。知覚神経を走る痛みの信号を遮断するといったような効果があります」
「すみません……。前にも麻酔科の先生からうかがってはいたのですが……」
「いえ、治療を受けているのは翠葉ちゃんですから。説明を聞いただけでは理解できないことも多々あるかと思います。また疑問に思うことがあればいつでもお話させていただきます」
 お母さんは軽く頭を下げ、手にこめていた力を緩めた。
 その手が私の空いている左手を包む。
「良かった……治療までもが痛いものじゃなくて――」
 言うと、治療が終わるまで一言も話しはしなかった。