光のもとでⅠ

「祠……?」
 お父さんは私を前に立たせると肩に手を置いた。
「そう、祠。山の神様」
 祠の周りには何枚かの枯れ葉が落ちているものの、廃れた感じは見受けられない。
 お父さんとお母さんは祠に近づくと、それらをひとつひとつビニール袋に入れていく。
 きれいになった祠の前に、お母さんはバッグから取り出したリンゴを。お父さんはポケットから取り出したみかん置いた。きっとお供えするために持ってきたもの。
「……翠葉と離れている間、ずっと神様にお願いしてた」
「ごめんね。側にいることもできず、神頼みしかできなくて……」 
 申し訳なさそうな顔をするお父さんとお母さんを前に、私はブンブン首を振った。
 側にいないでくれと懇願したのは私なのだから――。
 今は泣いてもいい気がして、こみ上げる涙を我慢することなく零し、お父さんとお母さんに抱きついた。
 ぎゅっと力をこめたのは腕なのに、目から涙がポロポロ零れ、カシミヤコートの上をコロコロと転がっていく。