回廊の外、駐車場からは見えない場所に岩の塊に見える石造りの建物と多角形のガラス張りの小さなホールがあった。
 そのふたつを通り過ぎ、自然の森へ向って歩いていく。
「森へ行くの……?」
「んー……正確には山、だな」
 言いながらお父さんが笑う。
「夏は涼しくて良かったけど、冬はさすがに寒いわね」
「そりゃぁな。この時期、朝は霜が降りるし風景も白っぽい」
「その時間帯に行ったら絶対に滑るわね……」
「そうなんだ。俺も何度か転んでさ……だから日中に連れて行きたかったんだよね」
 縦一列で歩いている中、お父さんとお母さんが私の前後で会話する。
「そこ、滑りやすいから気をつけてな」
 手を貸してもらってちょっとした段差を下りる。
 道という道があるわけではない。人が何度も歩いて形になったような道を歩いていた。
「あと少しよ」
 後ろからお母さんに声をかけられ、お父さんの背の先を見ると――。