――「私、御園生翠葉です」
 ――「あら、きれいな名前ね? どういう字を書くの?」
 ――「翡翠の翠に葉っぱの葉!」
 ――「緑っぽい名前ね」
 ――「お姉さんのお名前は?」
 ――「私の名前は秘密……」
 ――「どうして……?」
 ――「翠葉ちゃんにも一緒に願掛けをしてほしいから」
 ――「願掛け……?」
 ――「そう……。ユイちゃんが来てくれるように一緒に祈って? ユイちゃんが来てくれたら翠葉ちゃんに名前を教えてあげる」
 胸の中ほどまである長いネックレスのチェーンに通された何かを握りしめる手に力がこめられていた。
 ――「ユイちゃんはお姉さんのお友達?」
 ――「いえ、違うわ」
 ――「それじゃ、家族?」
 ――「そうね、家族でとても大切な人」
 ――「どうして来てくれないの?」
 ――「うーん……家族だから、かな?」
 ――「家族なのに来てくれないの?」
 ――「あなたはいいわね? 優しいお兄さんがいつも来てくれて」
 そう口にしては寂しそうに微笑んだ。そのお姉さんの顔は――。