光のもとでⅠ

 家族五人揃ってゆっくりとした朝食を過ごすのは初めてのこと。
 なんだかんだと二時間近くをダイニングで過ごした。
 そのあと、唯兄は仕事で部屋に篭り、蒼兄は支度が済むと大学へ行った。
 お父さんも三階の仕事部屋で調べ物をしていて、お母さんはお昼ご飯の支度をしている。
 私は一度自室に戻り、自分の趣味といえるものを紙に書き出していた。
「植物と戯れるのは無理ね……」
 部屋を見回しても、あるべきところにアンスリウムとベンジャミンはいない。
 今、あの子たちはマンションで高崎さんの管理下にある。
 ここにあってゲストルームにないものは――ピアノひとつ。
 ゲストルームにもピアノはあるけど、シュベスターではない。
 階段を上がり、広めの踊り場に置かれているピアノの蓋を開ける。
「久しぶり……。夏、以来だね」
 あのときはひどい弾き方をしてごめんね。でも、今も変わらないかも……。