「リィっ!」
「え? ……唯兄?」
「ごめんっ、午後まで待てなくて来ちゃったんだ」
 あ、鍵っ――。
 ポケットから取り出して唯兄に渡すと、唯兄はほっとした顔をし、唯兄の後ろで湊先生が小さくため息をついた。
 唯兄はすぐに燻し銀のチェーンに鍵を通す。
「昔はさ、これに通して身に付けてたんだ。でも、鍵が結構かわいすぎてね。恥かしくなってキーケースに付けてた」
 なんと言ったらいいのかわからずにいると、
「なくすのが怖ければ、やっぱり常に身に付けておくべきかな、と。とりあえずまた首からぶら下げておくことにする。見つけてくれてありがとう」
「……とても大切な鍵なのね?」
「そう、すごく大切な鍵」
 言ってペンダントトップになった小さな鍵を胸もとで握り締める。
 あ、れ……? 前にもどこかでこんな仕草を見たことがない……?
 それはいつ、どこで?
「四時過ぎにはまた迎えに来るから! じゃ、勉強がんばってね」
 と、唯兄は中庭から出ていった。