授業ではとくに困ることはなかった。
 それは毎日のノートをみんなが日替わりで取ってくれていたから。
 それがなければ、この一週間でかなりの遅れを取っていたことだろう。
 本当に、みんなには感謝してもしきれないくらいだ。
 授業が終わるとホームルーム後のように、川岸先生から声がかかった。
 すると、すぐに飛鳥ちゃんが立ち上がる。
「先生ばかりずるいっ! 今度は私たちが保健室まで付き添います」
「ははっ、じゃ頼んだ。次の授業に遅れるなよー」
 川岸先生は手を振って教室を出ていった。
「ってことで、保健室まで送るわ」
 と、桃華さんと飛鳥ちゃんが席を立つ。
「ありがとう」
 ただそう答えただけなのに、海斗くんに頭をわしわしとされた。
「ようやく普通に"ありがとう"って言ってくれるようになったな」
 海斗くんが満足そうに言う。
 普通に、ありがとう……?
 桃華さんに促されて教室を出る頃には佐野くんも合流していた。