光のもとでⅠ

 お母さんの今年の仕事はパレス一本。つまり、最終確認が終わった今はとくに仕事がない状況。
 お父さんはパレスのほか、来年手がける仕事の準備で朝から夕方までは幸倉で仕事をしている。
 夕飯の時間になるとマンションに来て、夕飯を食べるとまた幸倉へ帰る。
 家族が帰る場所、休む場所が別々の生活をしていた。
 私の学校が休みに入ればそんな生活をしなくてもすむ。生活の基盤は幸倉に戻る。
 幸倉へ帰れば、長いことしていなかった趣味のひとつひとつを再開できる気がした。
 大好きなことをして過ごせば、自分らしさを取り戻せる気が――した。

 ゲストルームに帰ると、迎え出てくれたお母さんに今日幸倉へ帰れるかを尋ねる。と、
「別にいいわよ? じゃ、夕飯食べたら帰る用意しなくちゃね」
 何を訊かれるでもなく、すんなりと了承してもらえた。