光のもとでⅠ

「そっかそっか。……でも、『捕まった』って表現はちょっと……」
 苦笑しながら指摘される。
「だって……」
 何度考えてもほかの言葉は見つかりそうにない。
「本当に捕まったんだもの……。右手、掴まれたまま問診受けたんだよ?」
 そのときのことを話すと、今度はクスクスと笑いだす。
「涼先生、間違いなく司のお父さんだな」
「うん……」
「で? その憂鬱そうな顔は胃カメラの予約でも入れられた?」
「うん……」
「年内?」
「ううん、そこは譲歩してもらって年明け早々」
「翠葉は嫌かもしれないけど、俺らはそのほうが安心かな」
 会話が一段落したとき、パタパタ、とフロントガラスに水滴が張り付いた。
 撥水加工の効果で、雨は垂れることなく、まん丸の雫を維持している。
 それらは走行風に従い、次々と上方へ移動した。