光のもとでⅠ

 必死に伝えると、
「御園生さん、そういうことは安易に考えないほうがいいと思いますよ」
 言いながら少しずつ私との距離を詰める。私は後ずさりをすることで距離を保っていた。
 それを見ていた相馬先生が、
「おい、スイハ……。それじゃ診れねーだろーが……」
 呆れたふうに突っ込まれた。
「だって、戻してませんっ。だから消化器内科にはかからなくてもいいんですよね!?」
 決して歩くのをやめようとはしない涼先生に抗議しながら逃げる。
「診察ではなく挨拶ですよ」
 涼先生はにこりと笑って足を止めた。そして右手を差し出される。
「挨拶……ですか?」
「そうです。挨拶です」
「……挨拶に握手、ですか?」
「はい。挨拶に握手はおかしいですか?」
「挨拶」と「握手」。漢字を頭に浮かべてみたらさほど不釣合いな組み合わせではなかった。