「なんだよ。そんなところにいるくらいなら保健室まで来ればいいのに」
 海斗くんが言うと、
「学校まで来て姉さんの顔を見る気にはならない」
 と、眉間にしわを寄せる。
「とにかく無理はするな」
 言うと、司先輩は三階への階段を上りだした。
「翠葉、教室入るぞ」
「うん……。ねぇ、海斗くん……」
「何?」
「……どうして本を持って立ってるだけなのに、あんなに様になるの?」
「……司のこと?」
「そう……。いつも思うのだけど、どうして無駄に格好いいんだろう?」
「くっ……今度司に直接言ってやりなよ。俺は司の反応が楽しみ。ぜひその場に居合わせたい!」
 海斗くんは面白そうに笑って教室のドアを開けた。