保健室を出てからもポケットにある鍵が気になっていた。
 どこかで見たことがあるような気がして……。
 でも、全然知らないもののような気もしてどうしてか気になる。
「翠葉?」
 先に階段を上がる海斗くんに声をかけられてはっとする。
「ポケット、何か入ってるの?」
「え? あ、預かりもの?」
 気づけばポケットの部分を無意識にぎゅっと握りしめていた。
「もの? って訊かれても困るんだけど……。ま、いいや。次は英語だよ」
 言われて踊り場を通り過ぎ、最後の階段を上り始めた。
「眩暈は?」
「そんなにひどくは感じないから大丈夫」
「そう? 司から数値が良くないから気を付けろってメールが来たけど」
 と、届いたメールを見せてくれた。
「あ……えと、学校を休んでいたときよりも軽いから、本当に大丈夫」
 階段を上がりきると意外な顔があった。
「……学校を休んでたときの眩暈と比較してどうするつもり?」
 紛れもなく司先輩。
 本を片手に、壁に寄りかかっていた。