「それ、若槻の妹の形見といってもいいような代物らしいの。いつも肌身離さず持っているのよ」
 そんなに大切なものだったの……?
「これ、キーホルダーが壊れてしまったみたいで、それでラグの上に落ちていたの」
「手元にないって知った時点からずっと探してたっぽいわね。でも、今九時五十分過ぎか、そう長い時間ではなかったはずよ」
 そんな話をしていると、ノック音と共に海斗くんが入ってきた。
「翠葉、行けるっ?」
「はいっ」
「ちょい待ち、これだけは全部飲んでいきなさい」
「は、はいっ」
 湊先生に言われ、慌ててカップに残っているお茶を飲み干し、お礼を言ってから保健室を出た。